実は全く別物?クレパスとクレヨンの違いや園の指定理由を徹底比較
子どもの入園準備やお絵描きグッズを選ぶ際、多くの保護者が直面するのが「クレパスとクレヨンは何が違うのか」「指定されたもの以外ではだめなのか」という疑問です。見た目はよく似ている両者ですが、画材としての成り立ちや原材料、発揮する表現力は根本から異なります。
実は「クレパス」は一般名称ではなく、日本のある文具メーカーが開発した登録商標であり、世界的には「オイルパステル」と呼ばれる画材の先駆けです。本稿では、原材料や描き心地の科学的な差異から、保育園・幼稚園が明確に使い分ける教育的理由、クーピーペンシルとの決定的な違い、さらには服や家具に付着した頑固な汚れを落とす実践的ノウハウまで、現場の知見を交えて詳細に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:クレヨンは「硬質で線画向き・手が汚れにくい」、クレパスは「軟質で面塗り・混色・重ね塗りが得意」という明確な性質差がある。
- 要点2:クレパスはサクラクレパスの登録商標であり、一般画材名では「オイルパステル」に分類され、大正時代に日本で誕生した。
- 要点3:園の指定理由は手指の筋力や発達段階(筆圧・手先の器用さ)とカリキュラム(なぐり描きか重色表現か)に直結している。
【徹底比較】クレパスとクレヨンの決定的な違い|原料・描き心地・表現力
クレヨンとクレパスは、外見こそ棒状の似通った着色画材に見えますが、配合されている成分比率と物理特性が大きく異なります。その違いを表す最大の特徴は「液状の油(液体油)が含まれているかどうか」にあります。
| 比較項目 | クレヨン(Crayon) | クレパス(オイルパステル) | 教育現場・編集部の評価 |
|---|---|---|---|
| 主原料・成分 | 顔料、固形ワックス、木蝋 | 顔料、ワックス、液体油(鉱物油等)、体質顔料 | 油分の有無が硬さと伸びの差を生む基本構造 |
| 硬度と描き心地 | 硬い/サラッとしていて滑らか | 柔らかい/ねっとり濃厚で伸びが良い | 筆圧が弱い幼児には柔らかいクレパスも好適だが折れやすさに差 |
| 得意な描画表現 | 細い輪郭線、軽快なスケッチ | 面塗り、混色、重ね塗り(重色)、スクラッチ | 美術教育の高度なカリキュラムにはクレパスが必須 |
| 手や周囲の汚れやすさ | 汚れにくい(ベタつきが極めて少ない) | 汚れやすい(粘性油分が手や机に付着しやすい) | 家庭内や低年齢児の自立描画ではクレヨンが扱いやすい |
| 推奨対象年齢 | 1歳半〜3歳前後(乳幼児・年少) | 4歳〜小学校低学年以降(年中・年長〜) | 手指のコントロール力に応じたステップアップが理想的 |
クレヨンは古代エジプトやギリシャのろう画(エンコスティック)をルーツに持ち、顔料をパラフィンワックスなどで固めて作られます。粘り気が少なく硬質であるため、「細い線を描く」「輪郭を取る」作業に適しています。一方で、表面がつるつる滑るため、上から別の色を塗り重ねても弾いてしまい、色を混ぜ合わせる混色は困難です。
対するクレパスは、ワックスに加えて液体油(ミネラルオイルなど)が練り込まれています。油絵具のような粘性と柔軟性を持っており、紙の上で色が溶け合うように伸びます。下地の色の上に別の色をのせる重ね塗りや、指先でこすってグラデーションを作るぼかし技法、黒で塗りつぶした上から針などで削るスクラッチ技法など、多彩な芸術的表現が可能です。

なぜ保育園や幼稚園で指定されるのか?教育現場が使い分ける真の理由
入園時、園から「クレヨンを用意してください」「クレパス(16色)を指定します」と細かく指示される背景には、単なる慣例ではなく、子どもの手指の発達段階と造形教育のカリキュラムに根ざした明確な指導意図が存在します。
保育士や幼稚園教諭への聞き取り調査によると、使い分けの基準は主に以下の2点に集約されます。
1つ目は、「手指の巧緻性(こうちせい)と筆圧のコントロール力」です。1〜2歳の乳児期から3歳の年少期にかけては、手のひら全体で画材を握り込む「手掌把握」から、指先を使って道具を保持する段階へと移行する過渡期にあたります。この時期に柔らかすぎるクレパスを持たせると、握りつぶして折ってしまったり、画面全体が摩擦でドロドロになってしまったりします。そのため、折れにくく手が汚れにくい硬質なクレヨンが選ばれます。
2つ目は、「年齢別カリキュラムにおける表現目標の違い」です。年中(4〜5歳)から年長、小学校へと進むにつれ、保育指針における表現領域は「なぐり描きを楽しむ段階」から「自己の感情や情景を色彩豊かに構成する段階」へと深化します。「赤と黄色を混ぜて夕焼けのオレンジを作る」「動物の毛並みを重ね塗りで立体的に表現する」といった課題に対応するためには、混色と重色が自在に行えるクレパスが必須用具となります。
「クレパス」の正体と歴史の真相|商標登録とオイルパステルの関係
画材売り場で一般的に並んでいるクレパスですが、公的な商品区分における名称は「オイルパステル」です。「クレパス(Cray-pas)」という呼称は、株式会社サクラクレパスが保有する登録商標であり、同社以外が製造・販売する同種画材にクレパスという名称を用いることはできません。
その歴史は、大正時代末期の1925年(大正14年)に遡ります。当時、洋画家の山本鼎(やまもとかなえ)らが提唱した「自由画教育運動(子どもの自由な感性を育てる美術教育)」に深く共鳴したサクラクレパス(当時の日本文具製造株式会社)の創業者らが、「子どもたちが扱いやすく、パステルのように混色ができて、クレヨンのように定着する画材を作りたい」という情熱から世界で初めて開発しました。「クレヨン」と「パステル」の長所を融合させたことから、両者の名前を取って「クレパス」と名付けられた経緯があります。
その後、この日本発のイノベーションは海を渡り、海外では「Oil Pastel」として定着しました。現在ではぺんてる株式会社が展開する「ぺんてるパステル」など、他社からも高品質なオイルパステルが多数製造され、児童用のみならずプロの画家用画材としても世界中で愛用されています。
また、国内クレヨン市場において高いシェアを誇るぺんてるのクレヨン(「ずこうクレヨン」等)は、従来の硬いクレヨンに独自の軟質化技術を取り入れ、折れにくさと濃い発色を極限まで両立させた設計として、多くの教育機関から絶大な信頼を獲得しています。

クーピーペンシルとの違いは?3大画材の特徴と使い分けマップ
幼児向け画材としてクレヨン、クレパスと並び絶大な人気を誇るのが、同じくサクラクレパスが1973年に世に送り出した「クーピーペンシル(COUPY-PENCIL)」です。保護者からは「クレパスとクーピーはどちらを買うべきか」という相談が頻繁に寄せられます。
クーピーペンシルの最大の特徴は、「軸全体が芯になっている色鉛筆」である点です。ポリエチレン樹脂と顔料を特殊配合して成形されており、以下のような独自のメリットを持ちます。
まず、手や服に色が一切つきません。筆箱の中で粉が散ることもなく、付属の消しゴムで簡単に描線を消すことができます。さらに色鉛筆のように削り器で尖らせることが可能なため、細かい塗り絵や文字の練習にも適しています。
しかし、描画の迫力や発色の重厚感という点では、クレパスに軍配が上がります。クーピーは樹脂を含んでいるため、広い画用紙を一気に塗りつぶすダイナミックな表現や、絵具のように色を練り合わせる混色には向きません。
目的別の選び方としては、「幼児の最初のお絵描きや家庭での汚れ防止にはクレヨン」「絵画教室や園の造形表現・作品展にはクレパス」「小学生の図工や細かな観察記録、家庭学習のワーク用にはクーピー」という使い分けが極めて合理的です。
【実態検証】現場のリアルな悩み「服や机の汚れ」を科学的に落とす裏ワザ
クレヨンやクレパスを買い与える際、家庭内で最も懸念されるのが「机や壁、衣類への落書き・付着汚れ」です。水拭きや通常の洗濯洗剤だけで擦ると、油分が繊維の奥に押し込まれて余計にシミが広がってしまうケースが多発します。
汚れを落とす鍵は、成分である「固形ワックス」と「液体油」を科学的に分解することです。
【机・フローリング・家具に付着した場合】
プラスチックや合板に付着した汚れには、クレンジングオイル(メイク落とし)または消毒用エタノールが絶大な威力を発揮します。油分には油分を馴染ませるのが鉄則です。コットンや不要な布にクレンジングオイルを少量染み込ませ、汚れの表面を円を描くように優しく拭き取った後、固く絞った濡れ雑巾で二度拭きします。なお、無垢の木材や特殊塗装の家具は変色の恐れがあるため、目立たない場所で試してから作業を行ってください。
【衣服・布製品に付着した場合】
衣類にクレパスが付着した際は、水につける前に「台所用中性洗剤(油汚れ用)」または「クレンジングオイル」を直接原液のまま汚れ部分に塗布します。40℃〜50℃程度のぬるま湯を少量加え、古い歯ブラシなどで裏側から叩くようにして顔料と油分を浮き上がらせます。その後、ぬるま湯でしっかりすすぎ、通常の洗濯機にかけることで、繊維を傷めずに綺麗に落とすことができます。

【プロの結論】年齢・目的別おすすめ画材|向いている子・慎重に選ぶべき基準
子どもの発達心理学や幼児教育の知見に基づき、各画材が向いているケースと慎重に選ぶべき判断基準を整理しました。
クレヨンをおすすめできるケース・向いている子
・年齢:1歳〜3歳前後(乳幼児・保育園年少)
・筆圧のコントロールがまだ難しく、画材を力任せに握りしめてしまう子ども。
・リビングのテーブルや床を汚されるストレスを極力減らし、親が見守る中で自由に描かせたい家庭環境。
・丸や直線などの「なぐり描き(スクリブル)」を通じて、道具を持つ手の感覚を養いたい初期段階。
クレパス(オイルパステル)をおすすめできるケース・向いている子
・年齢:4歳〜小学校低学年以降(幼稚園年中・年長〜小学生)
・色の混色実験や、ダイナミックな面の塗りつぶし、指先を使ったぼかし表現に興味を示し始めた子ども。
・園や学校の指定教材として、作品展やコンクールに向けた本格的な造形カリキュラムに取り組む場合。
・手先の力が適度に抜け、道具を折らずに適正な筆圧でコントロールできるようになった段階。
クーピーペンシルをおすすめできるケース・向いている子
・年齢:5歳〜小学生以上
・細かいキャラクターの塗り絵や、カレンダー・学習ドリルへの書き込みを好む子ども。
・外出先やリビング学習など、絶対に手や周囲を汚したくないシチュエーションでの使用。
【クレパス クレヨン 違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:保育園から「クレパス」を指定されましたが、手持ちの「クレヨン」で代用しても問題ありませんか?
A1:短期間の一時的な代用は可能ですが、基本的には指定された「クレパス」を準備することをおすすめします。園の指導計画では、2色を混ぜる混色指導や重ね塗り技法を行うことが多く、クレヨンでは色が弾かれて先生の意図する技法を子どもが体験できない可能性があるためです。
Q2:1歳児にお絵描きをさせたい場合、どちらを選べば安全ですか?
A2:1歳児には、硬質で折れにくく、万一口に入れても安心な天然素材(ミツロウ等)で作られた「幼児用太口クレヨン」が最適です。柔らかいクレパスは噛みちぎってしまう危険性があるため、誤飲防止の観点からも低年齢時はクレヨンが推奨されます。
Q3:サクラクレパス以外のメーカーから「クレパス」は販売されていないのですか?
A3:販売されていません。「クレパス」は株式会社サクラクレパスの固有の商標名です。他社製で同様の性質を持つ画材をお探しの場合は、「オイルパステル」または「パステル(軟質タイプ)」という名称の商品をお選びください。
Q4:クレパスが途中でポキポキ折れてしまう時の対処法はありますか?
A4:折れたクレパスは、巻いてある紙(巻紙)を少し剥がしてそのまま横向きにして面を塗る技法に活用できます。また、極太設計で耐久性を高めた「太巻タイプ」や、プラスチックケース内で固定しやすいモデルを選ぶことで、筆圧が強い子どもの破損を大幅に防ぐことが可能です。
まとめ:子どもの発達と目的に合わせた最適な画材選びを
クレヨンとクレパスは、似通った外見でありながら、原料に含まれる油分の違いによって「硬質で線画に強いクレヨン」と「軟質で色彩表現が無限に広がるクレパス」という決定的な機能差を持っています。
保育園や幼稚園での指定は、単なるルールではなく、子どもの手指の骨格発達や創造性を無理なく伸ばすための教育的配慮に基づいています。低年齢期には扱いやすく折れにくいクレヨンで描く楽しさを知り、成長とともにクレパスへとステップアップしていくことで、子どもの豊かな表現力を最大限に引き出すことができます。それぞれの特性と汚れへの対処法を正しく理解し、成長段階に寄り添った最適な画材を選んであげてください。 (出典: クレパス クレヨン 違い(Yahoo!ニュース))